新春トップインタビュー  
   
(株)J-オイルミルズ
 八馬史尚社長
 事業全体の筋肉質化に取り組む
 原料調達コストの上昇などが逆風となる中、価格改定の遅れもあって厳しい収益環境に身を置く。油価是正に注力する一方で、ソリューション事業では、スターチとの強みの掛け算が着々と成 を出しており、高付加価値化への取り組みも含めて、事業全体の筋肉質化への取り組みを加速させる。昨年一年間の総括と新年の抱負について、Jーオイルミルズ八馬史尚社長に聞いた。


八馬史尚社長
——昨年を振り返って。
「想定以上に原料の価格影響を受けた一年だった。一昨年上期は環境に恵まれ、その影響で年後半にかけて油脂の価格が軟化。それを戻すべく一昨年12月に、そしてさらに原料コストの上昇を受けて昨年8月に値上げを発表したが、そのタイムラグというか、コストと価格のズレが埋まらずに非常に厳しい一年となった。そのアクションの遅れは反省すべきだと考えている。一方で、高付加価値化の取り組みは計画どおりに進んでいる。社長に就任して二年過ぎたが、汎用油の値上げがこれほど浸透しづらいものだと、改めて感じた。こうした環境を織り込めば、高付加価値化と全体の事業の筋肉質化はもう一段スピードを上げていく必要がある。その認識を深めた一年だった。短期的には原料、ミール、為替のボラティリティへの耐性をどう高めていくかが課題であり、このマネジメントは重要なミッションになる。グローバルにみても天候、異常気象が当たり前になっており、このマネジメントをしっかりとやっていく。中長期的にはTPPの影響を極小化していく必要もあるし、その先には食の資源問題への備えも必要である。何よりも、日本では2020年以降、少子高齢化の影響が出てくると予想されている。人手不足もそうだが、事業を運営する上で市場を拡大しながら、一方で成熟化の中でいかに事業収益を確保していくかが重要になる」
「4月にサプライチェーンコントロールセンター(SCCC)を立ち上げた。生産部門、物流部門、販売部門の一気通貫での最適化が、なかなか見えていない部分があった。SCCCを立ち上げ、部門連携からさらに全体を見渡して最適化を図っていく体制で取り組みを進めた。油脂だけでも、いろいろな形態があって、家庭用のケースからローリー、バルクとさまざまな形態で、それぞれで全体最適化を図っていく。物流問題もしっかりと社内で見直すとともに、外部の方々との連携も深めていく。物流は今や一企業の問題ではなく、CO2排出やドライバー不足など、いろいろな意味で社会課題と直結しているので、そこは業界と協力して最適な答えを見出していくことが重要だろう。競争ではなく、業界の協調を図り、最適化を図っていく必要がある」
——今年度から新中計がスタート、進捗と課題は。
「業績については、油脂の値上げ、価格へのご理解を得る努力が足りなかったのは反省点。一方で、高付加価値化は一定の手応えはあるが、さらに加速していくことが必要。その上で、中計ではベースに組織風土をどうしていくか、企業ビジョンにも関係することだが、チャレンジしていく企業文化を醸成していきたい。Try&Error&Tryと言ってきたが、もう一段勢いをつけていきたい。育成領域であるスターチは、これまで自部門で生産から営業まで担当してきたが、ソリューション事業として油の営業部隊がスターチも学んで、油脂と組み合わせた提案を進めることで、これまでにできなかった新しいお役立ちの場 が広がってきた。その手応えは強く感じている。一つの成功例として、大豆粉とアミロファイバーを活用し、大手 販のお客様の低糖質パンに採用された。当社のアミロファイバーを使うことで、水分を保持してパサパサにならない。こうしたチャレンジは、今までできなかったが、成功事例が広がることで、点から線になってきた。海外でも同時並行で、タイでのスターチの販売が伸びている。タイは日系の冷凍食品、畜肉加工の拠点になっている。そこでの日本品質の提供、目標品質のデザインを可能とする当社のネットワークで貢献できることが増えている。粉末油脂も黒字化し、安定的に利益が出せるようになってきた。この先もさらに事業拡大を進めていく。今後は外販も含めて次の検討段階に入ってきた」
「チャネル展開では、中食惣菜が今後も女性の社会進出増加や単身世帯の増加で、市場は拡大していくだろう。ここは、まだまだ成長性が高い分野で、当社の強みを生かして、これまで以上の価値の提供を続けていく。中食素材は経時劣化が課題であり、これに対していかに役立つ提案をしていくか。油脂、スターチの技術で、まだまだお役立ちできる部分は多い。家庭用もそうだが、 販・ドラッグの市場が伸びており、ここに対するアプローチも、個 の取り組みも含めて行っていく。従来のPB対応にとどまらず、ユーザー様とともに対話し、最終消費者が何を求めているかを掘り下げて、きちんとカスタマイズした製品を提供していきたい」
——強みの掛け算を軸としたソリューションで、点から線になってきたという話しだが、今後さらに拡大していく上で、味の素グループとのソリューションや業界全体の取り組み等いろいろな考え方があると思うが。
「味の素グループとの連携は、これまで以上に進めていく。ソリューションのキーワードでも、一緒に提案する場面は増えている。さらに川上までさかのぼれば、包装資材の共同調達や人事交流もスタートした。今後も人事交流も進めながら、提案の幅を広げていきたい。油を調味料として考えれば、提案の幅はますます広がるし、味の素も食感改良の素材として酵素技術を持っており、これとスターチを組み合わせることも可能だ」
――今年の抱負を。
「中期計画がスタートし、厳しい一年だった。昨年の経験や反省、学んだことをいかにリカバーしていくかだが、方針は変わらない。昨年は値上げに忙殺された感はあるが、その先の仕事に向けて、これまで以上に取り組みを進めていく。いろいろな課題をお客様は抱えており、そこに当社の技術、サービスでお役立ちできる部分を広げていきたい。外食、中食のユーザー様では、人手不足の問題や多くの課題があるので、そこに当社の技術でお応えできる部分は多い。販売 でのトレンドとしては、フォローの風はあるが、ベースとなる価格 での課題をしっかりと克服していくことが、今期の最大のテーマでもある。引き続き、新商品等の提案で油の市場がさらに活性化していくように、貢献していきたい」。
 


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